「上の子には療育の付き添いでいつも待ってもらってばかり」「下の子の通院や癒しの時間を優先して、お兄ちゃん・お姉ちゃんにはがまんさせている気がする」——きょうだいがいるご家庭では、こうした後ろめたさを抱えている保護者さんが少なくありません。
私は放課後等デイサービスで18年ほど、障害のあるお子さんだけでなく、その「きょうだい」たちの表情もたくさん見てきました。がまんしている様子をあまり見せない子ほど、実は心の中にいろいろな気持ちを抱えていることがあります。今日は、きょうだい児が抱えやすい気持ちと、忙しい毎日の中でも取り入れやすい関わりの工夫についてお話しします。
せんせい、おにいちゃんばっかり こうえんに つれてってもらってて ずるいって おもっちゃうのは、わるいこと…?
わるいことじゃないよ。だれかとくらべて「ずるい」とか「さみしい」って感じるのは、とても自然な気持ちなんだ。その気持ちを持ったこと自体を責める必要はまったくない。大事なのは、その気持ちを安心して話せる場所があるかどうかだよ。
きょうだい児が抱えやすい気持ち
きょうだいに障害のあるお子さんがいる場合、周りの子どもたちは大人が思う以上にいろいろな気持ちを抱えながら日々を過ごしています。よく見られるのは、次のような気持ちです。
さみしさ
通院・療育の付き添い・きょうだいの体調不良などで、親の時間や気持ちがどうしても一方に向きやすくなります。「自分だけ後回しにされている」という感覚は、口に出さなくても積み重なっていきます。
がまん
「今日はお兄ちゃんの日だから」「妹の調子が悪いから」と、自分の希望をそっと引っ込める場面が積み重なります。がまんが日常になると、本人も「がまんしている」という自覚を持ちにくくなることがあります。
「いい子」でいようとする
「わたしはだいじょうぶ」「ぼくは手がかからない子」という立場を、自分から引き受けてしまう子もいます。親を心配させたくない、負担をかけたくないという気持ちの表れであることが多いです。
言い出せない
不満や寂しさを言葉にすると、家族全体が困ってしまうのではないかと感じて、気持ちにふたをしてしまうことがあります。表に出てこない分、周囲が気づきにくいという難しさがあります。
以前担当していたお子さんのごきょうだいで、いつも「わたしはだいじょうぶだから」と言う女の子がいました。ところが、ある日の何気ない会話の中で「本当はもっとお母さんと二人で出かけたい」とぽつりと話してくれたことがあります。がまんが上手な子ほど、周りが気づきにくいというのは、現場で何度も感じてきたことです。
「どうして○○ちゃんだけ違うの?」への答え方(年齢別)
3〜5歳:シンプルに「脳の働き方が少し違う」
「○○ちゃんはね、脳の中に”苦手なところ”があって、それが大きいから、お父さんお母さんがたくさんお手伝いしているんだよ」くらいのシンプルな言葉が伝わりやすいです。「あなたのことも同じくらい大切だよ」という安心感の言葉を必ずセットで添えましょう。
6〜9歳:「平等と公平の違い」を伝える
「みんなに同じことをするのが平等、でもみんながちゃんとできるようにサポートするのが大切。○○ちゃんには今たくさんのサポートが必要で、あなたには違うサポートが必要。どちらも同じくらい大事なんだよ」という説明が理解されやすいです。
先生、「きょうだい児への伝え方・関わり方」について、くわしく教えて!
放デイの現場でよく見かけるのは、きょうだいが「なんで○○くんは怒られないの?」と保護者に聞いているシーンです。そのとき「あなたはもうお兄ちゃんでしょ」と返す保護者さんが多いのですが、まず「そう思うよね、当然だよ」と受け取ることが、後の説明をずっと聞いてもらいやすくします。
親ができる関わりの工夫
特別なことをする必要はありません。毎日の中で少し意識を向けるだけでも、きょうだい児が「自分も大切にされている」と感じられる機会は作れます。
| 工夫 | 具体的な例 |
|---|---|
| 短くても1対1の時間を作る | 「今日は5分だけ二人で」でも、積み重なると子どもにはしっかり伝わります。 |
| 気持ちを聞く時間を意識してつくる | 「最近どう?」と聞くだけでも、話したいことがあるときの入口になります。 |
| 「ありがとう」と「ごめんね」を使い分ける | 手伝ってくれたことへの感謝と、待たせたことへの謝罪は、分けて言葉にすると伝わりやすくなります。 |
| きょうだい児自身の予定・希望も尊重する | 習い事や友達との約束を優先していい場面を、意識してつくってあげます。 |
あるご家庭では、下のお子さんの療育が終わる15分前だけ、上のお子さんとコンビニでおやつを選ぶ時間にしていると聞いたことがあります。長い時間でなくても「二人だけの時間」として決めておくと、子どもの中で特別な時間として残りやすいようです。
してしまいがちなNG
悪気がなくても、きょうだい児の気持ちに負担をかけてしまう関わり方があります。次のようなことに心当たりがあれば、少しずつ見直せるところから始めてみましょう。
- きょうだい同士を比較する「お兄ちゃんはできるのに」「妹は大変なんだから」といった比較は、どちらの子にとっても重荷になりやすい言葉です。
- 「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」で我慢を求める年齢や立場を理由にがまんを求め続けると、本人の気持ちを表に出しにくくしてしまうことがあります。
- ケア役割を固定化するきょうだいの世話や見守りを、当たり前のように任せきりにしてしまうと、「自分の時間」を持ちにくい状態が続いてしまいます。
きょうだい児支援の場・相談先
きょうだい児の気持ちを支えることを目的にした「きょうだい会」を実施している地域や団体もあります。同じ立場の子どもたちと出会い、自分の気持ちを言葉にする経験は、家庭の中だけではなかなか得にくいものです。
お住まいの地域にどのような場があるかは、自治体の障害福祉の窓口や、お子さんが通う放課後等デイサービス・児童発達支援の支援員に尋ねてみるのも一つの方法です。家族全体を支える相談先として、児童家庭支援センターなどを案内してもらえる場合もあります。すべてを一人で抱え込まず、家庭の外にも頼れる場所があることを知っておくだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。
完璧じゃなくていい
ここまで工夫やNGを紹介してきましたが、すべてを毎日実行するのは現実的ではありません。療育や通院、仕事、家事に追われる中で、きょうだい児への関わりまで手が回らない日があるのは当然のことです。
大切なのは、完璧にこなすことではなく、「気にかけている」という気持ちがどこかで伝わっていることです。うまくいかなかった日があっても、それだけで関係が壊れるわけではありません。
現場で保護者さんたちを見ていて感じるのは、きょうだい児のことを気にかけている時点で、すでに大切な一歩を踏み出しているということです。完璧な関わりを目指さなくても大丈夫。できる日にできることを、少しずつ重ねていけば十分だと思います。
おわり



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