療育の前に体を動かすと集中が変わる?「運動先行」の考え方と放デイでの取り入れ方

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運動・感覚
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「さあ、プリントやろうか」と声をかけても、椅子に座ってすぐソワソワしてしまう。手遊びが止まらない、隣の子にちょっかいを出してしまう——放デイや児発の現場で、こうした「課題に入る前の落ち着かなさ」に悩んだことがある支援者は多いのではないでしょうか。実はこの「入り方」、課題の前に少しだけ体を動かす時間を入れることで変わることがあります。今回は「運動先行」という考え方と、現場での取り入れ方を整理します。

ヒコ先生

ヒコ先生
18年ほど現場にいますが、「今日はやけに集中が続くな」という日を振り返ると、来所前や活動前にしっかり体を動かしていた日が多い気がします。感覚だけで語らず、今日は根拠も一緒に整理してみますね。
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「運動先行」とは何か

「運動先行」とは、学習や着席課題などの前に、あえて軽い運動の時間を挟む取り組み方のことです。特別な機材や専門的な運動プログラムが必要なわけではなく、なわとび・体操・鬼ごっこなど、5〜10分程度の体を動かす活動を「課題の前座」として位置づける発想に近いものです。

「運動してから休む」「運動して発散させてから静かに座らせる」という感覚的な使われ方はこれまでもありましたが、近年は「運動の直後は脳が学習に向いた状態になりやすい」という角度からも注目されています。

なぜ効果があると考えられているのか

脳の血流・神経伝達物質の観点

一過性(急性)の有酸素運動の直後には、前頭前野の血流が増加し、集中や切り替え、ワーキングメモリといった「実行機能」が一時的に高まるとする研究があります。運動によってドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が高まることも報告されており、これはADHDの治療薬が働きかける系統と同じものだとされています。あわせて、BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる、いわば「脳の肥料」のような物質が海馬や大脳皮質で増加し、脳の発達を後押しするという指摘もあります。

運動の種類によって効きどころが違う

すべての運動が同じ効果というわけではなく、運動のタイプによって狙える効果が異なるとする研究(Zhuら, 2023)もあります。

運動のタイプ 具体例 期待されるとされる効果
クローズドスキル運動(動きが決まっている) なわとび・ランニング・ラジオ体操 ワーキングメモリの改善
複数の運動の組み合わせ サーキット運動 認知の柔軟性の向上
オープンスキル運動(状況判断が必要) 鬼ごっこ・じゃんけん系のゲーム・球技 抑制機能の向上
⚠️ 効果を保証するものではありません
ここで紹介している内容は、あくまで「そうした研究がある」という段階の話です。特に6〜12歳の年齢層については、まだ研究の蓄積が十分とは言えず、さらなる検証が必要だとする指摘もあります。「運動を入れれば必ず集中できる」という断定はできません。ただし、活動の順番を入れ替えるだけであれば大きなリスクを伴わずに試せる工夫でもあるため、「効果があるとする研究が増えている取り組み」として、現場の選択肢の一つに加えてみる、という位置づけで捉えてください。

放デイで取り入れる具体例

特別な準備がなくても、活動前の5〜10分に次のようなメニューを挟むだけで運動先行は始められます。

狭いスペースでもできるメニュー例

  • じゃんけん体操:じゃんけんで負けたら屈伸・勝ったらジャンプなど、ルールを簡単にした全身運動。指示理解の練習も兼ねられる
  • ミニサーキット:マットで前転→コーンをジグザグ歩き→的当て、を1〜2周。順番を待つ練習にもなる
  • バランス運動:片足立ち・バランスボード・平均台歩きなど、姿勢保持と体幹への刺激
  • リズム運動:音楽に合わせた手拍子・簡単なダンス。テンポに乗ることで気持ちの切り替えがしやすい子もいる

時間割への組み込み方(例)

時間 内容
来所後〜10分 自由遊び・水分補給(来所時間がバラバラな子はここで個別対応)
次の5〜10分 運動メニュー(じゃんけん体操・サーキットなど)
その後 学習・課題・製作などの着席活動

下校時間が子どもによってバラバラな放デイでは、全員同時に運動を始めるのは難しいこともあります。その場合は「来所した子から順に、5分だけ個別の運動メニューをこなしてから着席エリアに移る」という流し方にすると、少人数・順次来所の環境でも回しやすくなります。

ヒコ先生

ヒコ先生
以前勤めていた事業所では、来所順がバラバラな子が多かったので、全体で運動タイムを組むのをあきらめかけていました。でも「来た子からじゃんけん体操を1分だけ」というミニ版にしたら、無理なく続けられました。完璧を目指さず、できる範囲から始めるのがコツだと感じています。

取り入れる時の注意点

  • 興奮しすぎてしまう子もいる:オープンスキル運動(鬼ごっこ等)は盛り上がりやすい反面、気持ちの高ぶりが収まらず、かえって着席が難しくなる子もいます。その子には運動の強度を落とす・クローズドスキル運動に切り替えるなどの調整が必要です
  • クールダウンの時間を設ける:運動→即着席ではなく、深呼吸や水分補給など1〜2分のクールダウンを挟むと切り替えがスムーズになりやすい
  • 個別差が大きい:同じメニューでも「落ち着く子」と「余計にそわそわする子」がいます。一律のプログラムにせず、個々の反応を見ながら運動の種類・強度を調整することが前提になります
  • 感覚過敏・体力面への配慮:感覚特性や体力・体調によっては運動そのものが負担になる子もいるため、無理に参加させず選べる形にしておく
ヒコ先生

ヒコ先生
鬼ごっこを取り入れたら余計に興奮してしまい、その日はずっと課題に入れなかった子がいました。その子には次から「バランスボードで片足立ち」のような静かめの運動に変えたところ、落ち着いて課題に入れる日が増えました。運動先行は「どの運動を選ぶか」まで含めての工夫だと実感しています。

家庭・学校との連携で伝えるときの言い方

保護者や学校の先生に説明するときは、専門用語を並べるより「順番を変える工夫」として伝えるとイメージしてもらいやすくなります。

  • 「宿題の前に、なわとびを5分だけやってから机に向かうと、切り替えがスムーズなお子さんが多いんです」
  • 「体育や休み時間のあとの授業のほうが集中しやすい、というお子さんもいます。時間割の並びで相談できる部分があれば、学校にも共有してみてください」
  • 「絶対に効果があるというものではありませんが、リスクの少ない工夫なので、家庭でも試してみて損はないと思います」

断定せず「試してみる価値のある工夫」として伝えることで、保護者・学校ともに過度な期待や誤解を避けながら共有できます。

おわり

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