「なぜこの子はじっとしていられないのか」「触られるのをこんなに嫌がるのはなぜ?」——現場でよく聞かれる疑問です。その答えのひとつが、感覚統合にあります。
感覚統合とは、脳が体の内外から届く複数の感覚情報を受け取り、整理し、行動につなげるプロセスのことです。1960〜70年代にアメリカの作業療法士エアーズ博士が提唱した概念で、現在も発達支援・療育の現場で広く活用されています。
Contents
感覚統合とは何か——脳の「交通整理」の働き
この「脳の交通整理」の働きを感覚統合と呼びます。感覚統合がスムーズに機能していれば、授業中に姿勢を保ちながら黒板を見て話を聞く、といった複数の動作を同時にこなすことができます。一方、感覚統合がうまく機能しないと、行動・感情・学習に様々な困難が生じます。これは「わざとやっている」「努力が足りない」ではなく、脳の情報処理の特性によるものです。
感覚統合で扱う「7つの感覚」
| 感覚 | 役割 |
|---|---|
| ① 視覚 | 形・色・動きを認識する |
| ② 聴覚 | 音・言葉・リズムを処理する |
| ③ 触覚 | 皮膚への接触・圧力・温度を感じる |
| ④ 固有受容感覚 | 筋肉・関節の動きや力加減を感じる |
| ⑤ 前庭感覚 | 重力・バランス・スピードを感じる |
| ⑥ 嗅覚 | においを感じる |
| ⑦ 味覚 | 味を感じる |
このうち支援の現場で特に重要な役割を果たすのが、固有受容感覚・前庭感覚・触覚の3つです。
3つの基礎感覚を詳しく見る
① 固有受容感覚
筋肉・腱・関節に分布するセンサーから得られる感覚です。力加減が極端になる・物を壊しやすい・ふわふわした動きといった特徴が、処理が不安定な場合に現れることがあります。
② 前庭感覚
内耳にある前庭器官が担う感覚で、体が傾いているか・動いているか・回転しているかを感知します。
前庭感覚の偏りが見られる例
- 授業中にグラグラ・くねくねしてしまう
- 高いところや揺れる乗り物を極度に怖がる
- 回転や揺れをいつまでも求めて止まれない
- 姿勢を長時間保つことが難しい
③ 触覚
皮膚全体に分布するセンサーが担う感覚です。触覚の処理に偏りがある場合、衣服のタグや特定の素材を嫌がる、抱っこや身体接触を避ける、逆に自分から強く触れる・ぶつかるといった行動として現れることがあります。
感覚統合がうまくいかないとどうなる?
| 見られる様子 | 考えられる背景 |
|---|---|
| じっと座っていられない | 前庭感覚・固有受容感覚の刺激を求めている |
| 力加減ができない | 固有受容感覚の処理が不安定 |
| 特定の衣類・食感を嫌がる | 触覚・口腔感覚の過敏 |
| 転びやすい・姿勢が崩れる | 前庭感覚・固有受容感覚の処理の偏り |
| 人ごみでパニックになる | 聴覚・視覚・触覚の過敏が重なっている |
ヒコ先生
18年の現場で「この子は落ち着きがない」と言われてきたお子さんが、感覚統合の視点で見ると「固有受容感覚の刺激を体が求めている状態」だったケースは何度も経験しています。「困った行動」の背景に何があるかを考えると、支援の入り口がぐっと広がります。
18年の現場で「この子は落ち着きがない」と言われてきたお子さんが、感覚統合の視点で見ると「固有受容感覚の刺激を体が求めている状態」だったケースは何度も経験しています。「困った行動」の背景に何があるかを考えると、支援の入り口がぐっと広がります。
家庭・放デイでできる支援の工夫
固有受容感覚を育てる活動
- 重いものを運ぶ(お米・荷物など)
- 押す・引く・持ち上げる動作(家の手伝いを活用)
- 粘土・砂遊び・おにぎりを握るなど手への圧力刺激
- トランポリン・うんてい・のぼり棒
前庭感覚を整える活動
- ブランコ・ハンモック(ゆっくりした揺れ)
- バランスボール・バランスボード
- スキップ・ケンケン・クマ歩きなどのリズム運動
触覚の感覚を調整する工夫
- 衣類のタグを取り除く・素材を本人が選ぶ
- 深い圧力刺激(重いブランケット)が安心感につながることがある
- 砂・スライム・水遊びなど様々な素材に自分のペースで触れる
- 触られる前に「今から触るね」と予告する
ヒコ先生
「感覚統合」という言葉を知っているかどうかで、支援の質が大きく変わります。「困った行動」の背景に感覚の特性があると気づいた保護者の方の、子どもに合った環境を整えるためのヒントになれば嬉しいです。
「感覚統合」という言葉を知っているかどうかで、支援の質が大きく変わります。「困った行動」の背景に感覚の特性があると気づいた保護者の方の、子どもに合った環境を整えるためのヒントになれば嬉しいです。



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