「放デイのイベントでテレビゲーム大会をやりたいんですが、ちょっと抵抗があって…」。研修や現場の相談で、こんな声を聞くことがあります。「ゲーム=依存させるもの」「療育の場でやるものではない」という先入観は、支援者の中にも根強くあります。ですが、選び方と使い方さえ間違えなければ、テレビゲームは順番待ち・協調性・ルール理解・感情調整を育てる、意外と優秀な教材になります。今日は放課後等デイサービス・児童発達支援の現場での実践を踏まえて、「アリかナシか」を一緒に整理していきます。
私が支援者になりたての頃は、正直「イベントでゲーム機を出す」ことに抵抗がありました。でも実際にスイッチの協力プレイを取り入れてみたら、ふだん自分から人と関わろうとしない子が、隣の子に「ここ押して」と自分から声をかけている場面を見て、考え方が変わりました。ねらいを持って使えば、ゲームも立派な療育教材になります。
「ゲーム=悪」という先入観、一度立ち止まって考えてみませんか
テレビゲームというと、「時間を溶かすもの」「一人で画面に没頭するもの」というイメージを持つ支援者も少なくありません。保護者からも「家でもゲームばかりで困っているのに、デイでまでゲームなんて」と言われることを心配する声もあります。
ただ、現場で子どもたちの様子を見ていると、テレビゲームには「ルールが目に見える」「順番が明確に区切られる」「結果がすぐフィードバックされる」という、療育的に扱いやすい特性が備わっていることに気づきます。ボードゲームやカードゲームと同じ土俵で、「集団活動の教材のひとつ」として捉え直してみると、イベントの選択肢がぐっと広がります。
実はある、テレビゲームの療育的な効果
① 順番待ち・切り替え(衝動性のコントロール)
コントローラーが1台しかない、あるいは対戦制で順番が決まっている、という状況は、「自分の番が来るまで待つ」練習の場になります。タイマーや順番表と組み合わせることで、「あと〇分で交代」という見通しを持ちながら待つ経験を積むことができる、という考え方もあります。
② 協調・コミュニケーション(協力プレイ)
協力型のゲームでは、「そっち行って」「アイテム取って」といった役割分担の会話が自然に発生します。ふだん言葉でのやり取りが苦手な子でも、「同じ画面」という共通の対象があることで、面と向かって話すより気負わずに、間接的なコミュニケーションが生まれやすくなる場面を、現場では何度も見てきました。
③ ルール理解・勝ち負けの受容(感情調整)
「負けたらどうするか」「ルールを守らないとゲームが成立しないこと」を、体感として学べるのもゲームの特徴です。ボードゲームと同様、結果がはっきり出る分、負けたときの気持ちの立て直し方を練習する機会にもなります。
④ 手先・目と手の協応
コントローラー操作は、指先の細かい動きと画面情報の処理を同時に行う作業です。微細運動や目と手の協応の練習の一環として位置づけている現場もあります。
上記はあくまで現場で感じている実感ベースの傾向であり、医学的な効果を保証するものではありません。お子さん一人ひとりの特性によって合う・合わないは大きく変わるため、「この子にどう作用するか」は個別に見極める必要があります。
イベントで選ぶなら、こんなゲームが向いています
すべてのゲームがイベント向きというわけではありません。選び方のコツを表にまとめました。
| 向いているタイプ | 理由 | 具体例のジャンル |
|---|---|---|
| 協力型(対戦なし) | 勝ち負けの摩擦が起きにくく、達成感を共有しやすい | みんなで謎解き・パーティーゲームの協力モード |
| ターン制(同時プレイでない) | 「今は自分の番」が視覚的にわかりやすい | クイズ形式・順番制のミニゲーム集 |
| 1ラウンドが短時間 | 区切りが明確で、切り替えの声かけがしやすい | 1試合1〜3分程度のミニゲーム |
| 難易度・速度を調整できる | 成功体験を積みやすく、集団内の差を埋めやすい | CPU強さ・スピード設定が変えられるもの |
・対戦の勝敗がはっきりつく格闘・シューティング系(負けた悔しさが大きくなりやすい)
・オンライン対戦(知らない相手とのやり取りが発生し、管理が難しい)
・年齢制限(CERO区分など)が対象年齢に合っていないもの
実践の工夫:ねらいを持って運営するために
- 開始前に「1人〇分」「勝っても連続プレイなし」など時間のルールを明文化して掲示する
- ホワイトボードや順番カードで「次は誰の番か」を視覚化する
- 負けたときの声かけを事前に決めておく(例:「悔しかったね、次いこう」と気持ちを言語化してから切り替えを促す)
- ゲーム以外の活動(工作・運動・自由遊び)と組み合わせ、1日の中の一要素として位置づける
- ゲームが苦手・興味がない子への代替活動も同時に用意しておく
以前担当したイベントで、「負けたら1回休み」というルールを事前に紙で貼り出しておいたところ、それだけで癇癪が起きる回数がぐっと減ったことがありました。ルールを「口頭で言う」より「見える形で先に示す」ほうが、見通しを持ちやすい子には効果的だと感じています。
保護者への説明の仕方:「ただ遊ばせている」と誤解されないために
ゲームを取り入れたイベントは、事前の説明がないと「療育の時間を遊びに使っている」と受け取られてしまうことがあります。連絡帳や掲示物で、ねらいを言葉にして伝えることが大切です。
保護者向けのお便りには「本日はゲーム大会を実施しました」だけでなく、「順番を待つ練習・友達と協力する練習として実施しました」と一言添えるようにしています。ねらいが伝わるだけで、受け取られ方は大きく変わります。
個別支援計画や日誌に記録する際も、「ゲームで遊んだ」ではなく「順番待ち・勝敗の受容・協調性」など、どの目標に紐づく活動だったかを明記しておくと、保護者面談や関係機関との共有の際にも説明しやすくなります。
注意点・NGライン
療育効果が期待できるからといって、無制限に取り入れてよいわけではありません。以下の点には配慮が必要です。
| 注意点 | 現場での配慮例 |
|---|---|
| 依存傾向への配慮 | 既に家庭でゲーム時間が長い子は、デイでの導入時間・頻度を保護者と相談して決める |
| 課金・オンライン対戦のリスク | 施設で使う機器は課金設定・オンライン機能をオフにしておく |
| スクリーンタイムのバランス | 1日の活動の中でゲームの占める時間を限定し、運動・工作等の活動と組み合わせる |
迷う場合は、事業所内でガイドラインを事前に作り、児発管や管理者を含めたチームで方針をすり合わせておくと、支援者間で対応がぶれずに済みます。
まとめ
テレビゲームは「療育の場にはふさわしくないもの」と最初から除外してしまうと、順番待ち・協調性・ルール理解・感情調整といったねらいを、子どもたちが楽しみながら練習できる機会をひとつ失うことになるかもしれません。大切なのは「何となく楽しいから」ではなく、ねらいを持って選び、ルールを明確にし、保護者にも意図を伝えること。イベントのネタに悩んだときは、選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
おわり



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