「この子、家での様子がかなり心配…でも、どこに相談したらいいのか」
支援者として子どもに関わっていると、ふとそんな気持ちになることがあります。でも「児相(児童相談所)に連絡する」というハードルが高く感じられ、つい様子を見てしまうという方も多いと思います。
この記事では、教員・保育士・療育スタッフが最低限知っておきたい児相の基礎知識を、保護者目線でお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 児童相談所とはどんな機関か
- 支援者として「通告」すべきケース
- 通告の仕方・189(いちはやく)番のこと
- 匿名で連絡してもよい理由
- 通告後の流れと支援者の関わり方
ある保護者さんが「先生が児相に連絡してくれたことで、ようやく専門家につながれた。あのとき動いてくれて本当によかった」とおっしゃっていました。そのひとことが、この記事を書くきっかけになっています。
児童相談所(児相)とはどんな機関か
児童相談所は、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談を受け付ける公的機関です。都道府県・指定都市が設置しており、2023年時点で全国に約230か所あります。
| 業務の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 相談・調査 | 養護・障害・非行・育成など子どもに関するあらゆる相談を受付 |
| 一時保護 | 緊急に子どもを安全な場所に保護する(最長2ヶ月) |
| 措置・支援 | 施設入所・里親委託・保護者への指導など |
| 虐待対応 | 通告受理・安全確認・家庭支援・関係機関との連携 |
| 専門的アセスメント | 心理・医療・社会福祉などの専門職による子どもの状態評価 |
「虐待の機関」というイメージが強いですが、発達障害の相談・療育手帳の判定・家庭の養育困難なども扱っています。支援者が「家庭の状況が心配」と感じたときの最初の相談先として使えます。
支援者として「通告」すべきケース
児童虐待防止法では、「虐待を受けたと思われる子ども」を発見した者は、速やかに通告しなければならない(第6条)と定められています。これは国民全体の義務であり、支援者はとくに「発見しやすい立場」として責任が重くなります。
虐待の4類型
- 身体的虐待:殴る・蹴る・熱湯をかけるなど身体に傷害を与える行為
- 性的虐待:性的な行為の強要・性器や性交を見せるなど
- ネグレクト:食事を与えない・病院に連れて行かない・学校に行かせないなど
- 心理的虐待:怒鳴り続ける・無視する・兄弟間で差別するなど
「確信がなくても通告してOK」の理由
よく「確信が持てないから…」と躊躇する支援者がいますが、通告は「確信がなくてもよい」とされています。法律でも「虐待を受けたと思われる」という疑いの段階で通告義務が発生します。
誤通告だったとしても、通告者が責任を問われることはありません。むしろ「気になっていたのに動かなかった」ことで取り返しがつかない状態になるリスクのほうがはるかに大きいです。
⚠️ こんなサインが見えたら相談を
- 不自然なあざ・傷が繰り返し見られる
- 極端に痩せている・清潔感がない状態が続く
- 「家に帰りたくない」「お父さんが怖い」と繰り返す
- 保護者が子どもを強く叩く・怒鳴る場面を目撃した
- 長期欠席・欠園が続き保護者と連絡がとれない
通告の仕方・189番のこと
189(いちはやく)番
児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」に電話すれば、最寄りの児童相談所につながります。24時間・365日対応しています。
- 無料(通話料無料・2015年7月〜)
- 匿名での相談・通告も可能
- 「相談したいことがある」という軽い気持ちでかけてOK
匿名通告について
通告者の秘密は守られます。「通告したのが自分だ」と保護者に伝えることはありません。支援者が「自分の名前を出したくない」という場合は、その旨を伝えれば対応してもらえます。
ただし、機関として組織的に通告するほうが、児相側も動きやすくなります。管理職・主任と共有した上で連絡することをおすすめします。
通告後の流れ
児相が通告を受け付け、担当のケースワーカーが割り当てられる
緊急性がある場合は48時間以内に子どもの安全を確認する義務がある
家庭訪問・保護者への聴取・学校や施設への情報収集など
関係機関が集まり、支援方針を決定する(支援者が参加することも)
在宅支援・施設入所・里親委託など方針に応じた継続支援
通告後も、学校・園・療育施設は「見守りの目」として引き続き関わることが求められます。子どもの変化(表情・傷・発言など)を記録しておき、児相と情報共有する関係をつくりましょう。
支援者と児相の連携のポイント
- 記録を残す:「○月○日、〇〇のあざを確認。〇〇と発言」など日時・内容を具体的に
- 組織として動く:個人で抱え込まず、管理職・主任と共有した上で連絡する
- 情報提供に応じる:児相から学校・施設への情報照会があった場合は迅速に対応する
- 要保護児童対策地域協議会(要対協)の活用:自治体の支援者会議に積極的に参加する
保護者の体験談
👤 体験談(保護者・Kさん)
「うちの子が通う療育事業所のスタッフが、私の子育てに悩んでいたころ、ただ話を聞いてくれた後に『一度、家庭の状況について児相に一緒に相談しましょうか』と声をかけてくれました。最初はびっくりしましたが、一緒に来てくれたことで安心して話せて。結果的に、訪問支援のサービスにつながりました。あのとき動いてくれなかったら、私が限界になっていたかもしれません。」
※個人が特定されないよう一部変更しています
「通告したら保護者との関係が壊れる」と心配する声をよく聞きます。でも、適切に動いてくれた支援者に保護者は感謝することが多いです。「気にかけてくれている」という気持ちが伝わるからだと思います。
発達障害・育て方に困っている保護者への関係機関のつなぎ方
児童相談所の業務は「虐待対応」だけではありません。子育てに行き詰まっている・発達障害のある子の対応がわからないという保護者からの相談も、重要な業務のひとつです。
支援者として、こういった保護者に出会ったとき、どのように関係機関へつなぐかを知っておくことが大切です。
「疲弊した保護者」のサインを見逃さない
保護者が「限界に近い」状態にある場合、以下のようなサインが出ることがあります。
🔴 言動のサイン
- 「もう限界です」「消えたい」などの言葉
- 「この子が憎い」「産まなければよかった」
- 支援者への攻撃的・依存的な態度の増加
- 連絡が突然途絶える
🔴 様子のサイン
- 表情が暗く覇気がない・涙もろい
- 子どもへの関わりが投げやりになる
- 外出・入浴・食事が滞っている様子
- 「誰も助けてくれない」という孤立感の訴え
「うちの子はなんでこんなこともできないの!」という言葉を笑い飛ばさないでください。保護者の限界のSOS信号かもしれません。
支援者として「つなぐ」ときの言い方
「あなたのことが心配だから、一緒に相談してみませんか」という姿勢が大切です。「通告する」「問題がある」という印象を与えないよう注意しましょう。
| 場面 | 避けたい言い方 | つながりやすい言い方 |
|---|---|---|
| 疲弊感の訴え | 「大変でしたね」で終わる | 「今すぐではなくていいので、一度一緒に相談の窓口へ行きませんか」 |
| 癇癪・暴力への困惑 | 「家での関わり方を工夫してみてください」 | 「専門家に相談すると、具体的なアドバイスをもらえることが多いですよ」 |
| 孤立している保護者 | 「ほかのご家族やご親戚には…?」 | 「支援者として私も一緒に考えたいので、まず連絡先だけ伝えておきますね」 |
どの機関につなぐかの目安
| 状況 | つなぎ先 | 電話番号・備考 |
|---|---|---|
| 育て方の悩み・精神的疲弊 | 子ども家庭センター・子育て支援課 | 市区町村の窓口。まず相談 |
| 「もう無理」「消えたい」など | 児童相談所 + 精神的サポート | 189番または都道府県の児相。必要に応じて保護者自身のカウンセリングも |
| 子どもへの暴言・叩くなどの衝動 | 児童相談所(保護者支援として) | 「通告」ではなく「相談」として本人が自ら電話できるよう促す |
| 発達障害の診断・療育利用検討 | 発達支援センター・医療機関 | 診断→受給者証→放デイの流れ |
💬 保護者(お子さん:小2・ADHD)
小学2年生のADHDの息子の癇癪がひどく、毎日怒鳴り続けてしまっていました。放デイのスタッフさんが「一緒に子ども家庭センターへ行きましょうか」と声をかけてくれて、初めて専門家に話を聞いてもらえました。「私も助けを求めていいんだ」と気づいた瞬間でした。
まとめ
- 児童相談所は虐待対応だけでなく、発達・養育・家庭相談など幅広く対応
- 支援者には虐待の疑いがある場合の通告義務がある(確信がなくてもOK)
- 189番(無料・24時間)でいつでも連絡できる。匿名通告も可能
- 通告後も「見守りの目」として引き続き関わり、児相と情報共有を
- 組織として動くことで子どもを守る力が大きくなる
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おわり



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